彼の恋人宣言

しおりを挿む


「正太郎、抗議しましょう!」

「あ、うん…」


 アルは僕の手から紙粘土で作っていた人骨を取り上げると、教室の隅に敷いてある新聞紙の上に自分が作っていた物と一緒に置いた。

 あ、並べないでほしいな…クオリティの差にダメージ受けちゃう。

 そんな僕のデリケートな部分にはお構いなく、珍しくお怒りのアルは僕の手を取って教室を出た。

 途中でトイレに寄って手を洗っていたら、シャツに血糊の付いた仲嶺がやってきてびっくりした。

 壁の模様が出来上がったベニヤ板に血痕を描き込む係らしい。生々しいよその色。

 それから、なぜか僕たちは三人で並んで歩いている。


「基本的には音響と小道具で脅かすらしい。
 あとはたまに俺らが適当に血みどろで斧持って追っかけんの」

「なるほど。それでシャツに血糊を付けているのですね」

「そうそう。これ実は親父のお古」


 こうやって聞いたら、ちゃんとホラーハウスっぽい。

 僕たちが作っていた骨だって、床にばら蒔いて恐怖を演出するものだし。


「で、お前ら何しに被服室行くんだ? 俺は演出係にこのシャツ見せに行くんだけど」


 たまに廊下にいる他のクラスの女子が仲嶺の血糊を見てびっくりしたり、アルを見て赤くなったりしている。


「ちょっと文句言いにだよ」

「え、御厨あいつらに逆らえんの?」

「う…、文句言うのはアルだし。僕もついでに突っ込もうかなって」




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