彼の恋人宣言 ■しおりを挿む
「僕たちって、ホラーハウスの客引きだよね?」
「ええ、そう伺っています」
文化祭まであと十日と迫ったある日の放課後。
ホラーハウスで使う小道具をせっせと作っていた僕たちは、役作りよろしく!と演出係に軽快に肩を叩かれて、一枚のプリントをそれぞれ受け取った。
この内容を僕はどう捉えればいいんだろう。
“成長しきっていない”は僕の真っ平らな胸へのフォローかなーなんて。
もう女装に決まっていることには異議を唱える気はない。
だって金髪碧眼のイケメンヴァンパイアと並ばされるんだよ?
いろんな人の目に晒されるのに、男のままでいるほうが惨めになりそう。
ウケ狙いの女装のほうがまだましだよ。
「…納得し難いですね」
やっぱり役作りとか意味わかんないよね。
ぜひ、勇気のない僕の代わりにこんなの必要ないだろう、と突っ込んでほしい。
「私は、正太郎とカップル役だからと聞かされて、快く引き受けたんです。 正太郎に嫌われている設定など、納得できるはずがありません」
いや、問題はそこではないのだよ!アルブレヒトくん。
なんでチラシやプラカード持って宣伝に出たり、教室の前で道行く人に声を掛ける係に、まるで創作劇のプロローグみたいな設定があるんだよ。
って、よく読んだら僕は話せない設定になってるし。
客引けないよ、何がしたいのうちのクラスの女子。
←Series Top
|