純愛宣言forever ■しおりを挿む
待っていても終わりそうにない言い合いに、とうとう痺れを切らした牧野さんが口を開いて大きく息を吸い込んだ。
「お二人とも、お静かに!」
アルと琳にとって、まさに青天の霹靂のような一喝が車内に響く。
決して声は大きくないのに迫力が凄まじくて、車内の全員が戦慄する。
当事者のアルと琳はもちろん、僕や運転手さんも背筋をまっすぐに伸ばした。
当然、言い合いなんて雷と同時に強制終了だ。
「……いい加減になさってください。もう敷地内に入っているんですよ?」
「す、すまない」
「ごめんやで……」
ルームミラー越しに睨まれたアルと琳は、眉尻を下げて項垂れた。
はぁ……牧野さんはすごいな。
この四人の中じゃ、間違いなく最強の男だよね。
僕は牧野さんだけは怒らせないようにしよう、と固く心に誓って、窓の外を見た。
……ていうか、牧野さんはさっき「もう敷地内に入っている」って言ったよね?
周りを見渡しても、木や芝生、花壇しかないんだけれど。
よく見ると木々の合間に遊歩道があって、散歩したら気持ちよさそうだ。
「ほんまにアルの家なん? なんかここ、森林公園みたいやで?」
そう、まさに琳の言う通り。
家族でお弁当を持って遊びに来るのに良さげな、緑いっぱいの公園って感じなんだ。
「ここは庭です。正太郎、時間がある時にでも二人で散策しましょうか」
「えっ! 庭!?」
僕はビックリして、思わずアルの顔を三度見してしまった。
琳もさすがに言葉にならないようで、絶句してしまっている。
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