閑話*ある晴れた休日 お花見編 ■しおりを挿む
応援してくれてる人がいる。
そう思うと俄然やる気が湧いてきた。
「もう、ほんっま可愛いな! アルはやめといて俺の」
「「琳」」
「……!」
琳が台詞を言い切る前に、ステレオで突っ込みが入った。
タイミングといい、迫力といい、息がピッタリだ。
たぶん琳は『俺の嫁にならへんか?』とでも続けたかったんだろう。
家でなら僕が苦笑するだけで終わるけど、この二人がいる前で言うなんて自殺行為だ。
「私の正太郎を、たぶらかさないでいただけますか」
「じょ、冗談やんか。ほら、よう親戚のおっちゃんが姪っ子とかに言うやろ。あのノリや! 軽口っちゅーやつや!」
琳は軽く汗をかきながら、アルと牧野さんに弁解をしている。
すると、牧野さんがにっこりと笑って琳の顎を掬い上げた。
「じゃあ、その軽い口を今すぐ塞いで、なにも言えなくしてあげようか?」
あと数センチで唇が触れ合うって距離まで詰め寄られた琳が青ざめる。
もし僕がこんな風にされたら、怖くてちょっと泣いてしまうかも。
実際、琳も軽く涙目になってるし。
「ご、ごめんなさい!」
「反省する?」
「しますします! せやからっ」
「ふふ。わかっているよ」
少し目が赤くなっている琳の頭を、牧野さんが優しく撫でている。
いいな。なんだかんだ言って、ラブラブなんだよね。
牧野さんに抱き付きたそうな顔の琳がすごく可愛い。
涼しい顔をしている牧野さんも、視線は熱っぽく琳を捉えているし。
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