閑話*ある晴れた休日 お花見編 ■しおりを挿む
……まぁいっか、美味しいならよかった!
まさかヒヤッとした出来事がいい方向に転がっちゃうなんてね。
たまたまだけど、これも実力のうちに入るよね。
「正太郎、俺ももらっていいかな」
嬉しくて緩む頬を持て余していたら、琳の卵焼きを食べ終わった牧野さんが声を掛けてきた。
「うん! いくらでもどうぞ」
「ありがとう」
僕は取り箸用の割り箸で牛肉巻きを一つ摘まんで、牧野さんのお皿に乗せてあげた。
アルが少し恨めしそうな視線を寄越したけど無視。
四人で食べるお弁当だから、独り占めはしないって約束をしているんだ。
「……アルの言う通り、ちょっと焦げた醤油の味がいいね。アスパラガスの甘味が引き立ってる」
「本当!?」
「うん。いいお嫁さんになれるよ」
「そ、そんな……」
お嫁さん、なんて。
僕は男だから、そんなのなりたくない。
でも、アルのお嫁さんになら、なってもいいかも。
お嫁さんって言っても、ご飯を作ってあげる人って意味だろうし。
……って、これはたまたまなんだった!
牧野さんに褒められて自信が少し付いたけど、確実にできるようにもっとがんばろう。
「よかったな、正太郎!」
「うん! 僕、もっとがんばる」
琳が自分のことみたいに喜んでくれてる。
きっと僕が努力していることを知っているからだ。
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