閑話*ある晴れた休日 お花見編 ■しおりを挿む
あったかいお茶をすすりながらアルをたしなめる牧野さんは、さすが長年の付き合いって感じで落ち着いている。
「す、すみません正太郎」
「ううん……。大丈夫だよ」
項垂れる金色の頭を撫でてあげたら、やっとアルが微笑んでくれた。
なんだかんだ言って典型的な見た目だから、抱き締めるだけなら何とでもごまかせるんだよね。
僕が困っていたのは、アルが恋人だって気持ちがあるからだし。
「ほな落ち着いたとこで、そろそろお弁当食べよか」
「うん!」
「ありがとうございます」
僕とアルは琳から紙皿と割り箸を受け取った。
いよいよ味の評価が出るんだ……!
牧野さんが琳が焼いた卵焼きを食べているのを見ていると、緊張が高まってくる。
「正太郎はどれを作ってくれたのですか?」
「あ、味付けしたのはこれ……」
アルに優しく問いかけられて、僕は一番近くにあったアスパラガスの牛肉巻きを指差した。
ちょっとだけ焦がしちゃったんだけど、苦くないといいな……。
お肉が焼けてから醤油をかけたらすぐに焦げて、思っていたより茶色くなっちゃったんだ。
「……すごく美味しいです! 醤油で少し焦がしてあるのですね」
「えっ……あ、あの」
わざと焦がしたんじゃなくて、誤って焦がしたんだけど。
「焦がし醤油の味が、いいアクセントになっています!」
「ありがとう……」
見た目より苦くないのかな?
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