閑話*ある晴れた休日 お花見編 ■しおりを挿む
「へぇ。彩りが良くて、すごく美味しそうだね」
先に感想を言ったのは牧野さん。
いつも料理をしている人から褒められたら、なんだかむず痒い気持ちになっちゃう。
でも一番気になるのは、やっぱり大好きな人の感想。
まだかな、まだかな……?
「アル、はいハンカチ」
「あ、ああ……すまないな、陽平」
「なに泣いてんねん! 今日はお弁当作るてわかってたやろ」
「え?」
おそるおそる顔を上げたら、アルは綺麗なハンカチで目頭を押さえていた。
本当に泣いてる、この人!
「ですが、正太郎がこの可愛らしい手で私のために……っ」
「あぁ、さよか」
琳が呆れた様子で溜め息を吐いた。
牧野さんはさすが、特に反応を示さずに四人分のお茶を注いでくれている。
……ここはとにかく、泣き止ませないとだよね。
「アル、泣かないで。僕はアルの笑顔を思い浮かべながら作ったんだから。ね?」
小刻みに震える肩を軽く揺すってみると、ハンカチの陰から濡れた目が僕を捉えた。
「正太郎……!」
「わっ」
アルが突然ガバッと抱き付いてきた。
人通りがあんまりないとは言え、ここは公園なのに!
アメリカ人だからしかたない……とは思っても、やっぱり恥ずかしい。
「あ、アルっ」
恥ずかしいから離れてほしいけど、大好きなアルを突き放すなんてできなくて困っている僕に、牧野さんが助け船を出してくれた。
「アル、ここは日本だ。それに正太郎が困ってるよ」
「……!」
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