閑話*ある晴れた休日 お花見編 ■しおりを挿む
◆ ◆ ◆
「素晴らしい! とても美しいです!」
「すごいね。近所にこんな立派な桜があるなんて」
桜の木を見て、アルと牧野さんが感嘆の声を上げる。
うちのマンションの裏手にある路地を少し進んだところにある小さな公園に、一本だけだけど桜の木があるんだ。
でも電車に乗って10分で桜の名所として有名な公園に行けるから、ここでお花見をする人はあんまりいない。
やっぱり騒ぐなら桜がたくさんあるところがいいのかな。
母さんも、ここの桜は通りすがりに眺めるぐらいがちょうどいいって言ってたし。
だけど……。
「僕はこの桜が好きなんだ」
小さい頃から毎年見ていた桜の木だから。
アルはにっこり笑って、満開の桜を見上げた。
「正太郎のお気に入りの場所に招待していただけるなんて、私は今とても幸せです」
「よかった」
天気もよくてポカポカしているし、絶好のお花見日和!
僕は牧野さんからシートを受け取って、琳と協力してそれを地面に敷いた。
そこにアルと牧野さんが持ってくれていた荷物を置いて、僕たちもシートに腰を落ち着ける。
すると、琳が座る間もなく、さっそくお重を広げだした。
「どうや! 全部俺らで作ったんやで」
お弁当が完成した時は達成感のせいか自信があったんだけど、いざ見られると恥ずかしい。
僕は俯いて、隣のアルの反応をチラチラと見遣った。
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