閑話*ある晴れた休日 お花見編 ■しおりを挿む
「琳は三角おにぎりが上手だね」
「俺おにぎり好きやから、実家にいてた時はよう自分で握っててん。最初は真ん丸しかできひんかったんやで」
「そうなんだ」
やっぱり積み重ねなんだ。
僕もたくさん練習して、やっと、辛うじて三角にできるようになったもんね。
初めて握ったおにぎりは恥ずかしいぐらいにいびつだったから、特に力を入れてがんばったんだ。
どんどん出来ていくおにぎりは大きさがまちまちだけど、すごく美味しそう。
僕はアルの笑顔を思い浮かべながら、気持ちを込めて一生懸命握った。
「わりとボリュームあるな」
「食べきれるかな?」
結局おかずが重箱二段分に、おにぎりが十二個もできてしまった。
中には小さいおにぎりもあるけれど、単純に計算すれば一人三個ずつだ。
みんな大食いじゃないし、僕はおにぎり二個までしか食べられないんだけど……。
「いけるやろ。アルは朝ご飯食べんと来るはずやし」
「な、なんで知ってるの!?」
確かに昨日の夜、アルが電話でそういうことを言っていた。
僕が作ったご飯を一粒でも多く味わいたいから、胃を空っぽにしておく……なんて。
そんなに欲張らなくても、いつでも作ってあげるのに。
「知ってるんやなくて、わかるんや」
「さすが琳だね」
「せやろ。ていうか、アルがわかりやすいんや!」
琳はニッと笑って重箱を包む風呂敷の端を縛った。
それに笑い返してから、僕は洗い物をするために張り切って腕捲りをした。
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