閑話*ある晴れた休日 お花見編 ■しおりを挿む
洗い物だらけのシンクに散らかったダイニングテーブル。
リビングのテーブルに並んだお皿の上では、出来上がった料理が美味しそうな湯気を上げている。
冷蔵庫のドアに貼ってある、手書きのレシピ集と完成予定図のイラストは琳の力作だ。
今日は春休み最後の土曜日。
僕は琳と二人、朝からキッチンでお弁当作りに奮闘していた。
実はあと二時間程でアルと牧野さんが家に来て、四人で近くの公園へお花見に行くことになっているんだ。
「ふぅ……あとはおにぎりして、おかず詰めるだけやな!」
ほうれん草入りのだし巻き卵を切り終えた琳が、出来上がったおかずたちを見て満足げに溜め息を吐いた。
「うん。このホイルで包もうよ」
「なんやこれ。えらい可愛らしいアルミホイルやな」
「姉ちゃんが昨日くれたんだ」
花柄のと四つ葉のクローバーの柄。
姉ちゃん曰く、これでおにぎりを包んだら男が喜ぶらしい。
本当かな?
「ほんならまだ冷めてへんおかずもあるし、先におにぎりしよか」
「そうだね!」
今日のおにぎりは彩り重視で、桜えびと大葉と胡麻の混ぜご飯。
本当は桜えびじゃなくて梅にしたかったんだけど、アルが苦手かもしれないから諦めたんだ。
僕は水で手を湿らせて、まだ少し熱いご飯を手に取った。
ゆっくり、まずは形を造ることを意識して握っていく。
ふと正面を見ると、琳は余裕で綺麗な三角を造り上げていた。
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