天使か悪魔か

しおりを挿む



「………………」


 この文面のまま読んだら陽平が怒りそうやな。

 陽平が勝手に人の手紙読まへん、ちゃんとした人でよかった!

 ていうか、聡のために手作りってなんや。

 俺、そんなこと言うた覚えないんやけど。

 …………でも、そない言われて否定せんかったかもしれへん。

 あー!! どないしよ!

 ていうか聡も、食べたかったもん当てられたからって男相手にドキドキするとかおかしいやろ!

 なんでこれってわかったんや、って思たらドキドキもするやろけど、わざわざ手紙に書かんでも!


「もしかして、読めない内容?」

「っ!」


 いきなり声を掛けられて、俺はビクッと身体を震わせた。

 車はいつの間にか動き出してて、陽平はまっすぐ前を見据えてる。

 なんとか話題変えてごまかされへんかな?


「そ、そういうわけや……ないんやけど、あの、」

「琳のことが好きだ、とでも書いてある?」

「ちゃうわっ! 俺のために手作りしたっちゅーからドキドキした、って書いてあっただけや!」

「へぇ。彼のために手作り、ね」


 ライトも日差しもないのに、陽平の眼鏡が不気味に光った。


「あっ……! ち、違うんや! あいつが勝手に勘違いしたんや!」

「うるさい。お仕置き決定だよ」


 ……あかん!

 もう言い逃れとかできそうにあらへん。

 その後、帰り道の途中で陽平が俺にケーキ奢ってくれたけど、味なんか全然わからんかった。




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