雪見温泉

しおりを挿む



 窓の外はまだ家だらけで、山や海が見えているってわけじゃない。

 それでも見たことのない街並みってだけで、僕の旅行気分はさらに高まってくる。

 そうなると気になるのが、さっき買ってきたお弁当。

 本当はもう少し自然が見えてきてからがいいんだろうけど、僕のお腹が待ってくれそうにない。

 駅弁を買うからって、張り切ってなにも食べないで来たのが悪かったかな。

 でも、さっそく食べようか! なんて恥ずかしくて言えないから、アルがお腹すいてないか訊いてみよう。


「アル……」

「お腹がすいたのですね?」

「な、なんでわかったの!?」

「正太郎の可愛らしい瞳が訴えています」


 目は口ほどにものを言うってやつ!?

 …………恥ずかしい!

 そんな指摘をされるんなら、素直にお弁当を食べようって言えばよかった。

 アルは予想が当たって嬉しいのか、いそいそと袋から駅弁を取り出している。


「では正太郎、お食事に致しましょう」

「うん……ありがとう」


 僕はアルから二つのお弁当を受け取った。

 カツと卵が入ったパン……と、いろんなおにぎりのお弁当。

 だってどっちかに決められなくて、電車に乗り遅れそうだったんだ!

 アルのお弁当は一つだから、分け合って食べればきっと大丈夫。


「列車の中というだけでワクワクしますね」

「でしょ! 何故か味も良くなるんだよ」

「楽しみです。それでは、いただきます」


 一緒にパチン、といい音を立てて割り箸を割る。

 だんだん自然が多くなっていく窓の外を見ながら、僕たちは買ってきたものを二人で美味しくたいらげた。




- 4/35 -

[≪prev | next≫]



 ←Series Top





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -