雪見温泉

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 車より電車がいいって言ってみてよかったな。

 アルが一生懸命経路を探してくれたらしくて、なんだか悪い気もしたんだけど。

 でも牧野さんによると、すごく楽しそうに検討を重ねていたらしい。

 牧野さんにお願いすれば簡単なのに……僕のためにがんばってくれたんだ。

 こうやって温泉旅行で誕生日をお祝いしてくれるだけで、身に余るほどなのに。


「アル……」

「どうしたのですか?」

「ありがとう。温泉……すごく嬉しい」


 僕はアルの服の袖を掴んで、優しい笑顔を見上げた。

 本当は手を握りたいんだけど、周りには他の乗客がいるし、アルは目立つから我慢。


「喜んでいただけて安心しました。行き先を勝手に決めてしまったので、本当は不安だったのです」

「僕はアルと一緒なら、どこでも嬉しいよ」


 アルは結構自信家なのに、僕のこととなったら簡単に不安になってしまう。

 もっと自信を持ってほしいと思うけれど、そんなところも大好き。

 手の位置を少しずらして、他の人からは見えにくいようにアルの小指に触れてみた。

 すると、長細い小指がゆびきりをするように僕の短い小指に絡んだ。

 少しでも触れ合えるのが嬉しくて、ちょっとニヤけてしまう。


「正太郎はずるいです」

「えっ、どうして?」


 アルはにっこり笑うと、僕の耳に唇を寄せてきた。


「あまりにも正太郎が愛らしいので、キスをしたくなってしまいました」

「────!!」




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