大人のチョコレート ■しおりを挿む
家に帰った僕は、まず牧野さんに貰ったチョコレートシロップを冷蔵庫に仕舞った。
すると、ちょうど母さんがキッチンに入ってきた。
「あら正太郎、おかえりなさい」
「ただいま母さん。明日のおやつはホットケーキにしてほしいな」
「いいわよ。じゃあお母さんからはこれをお願いするわ」
「ん…なにこれ?」
小さなメモ用紙に、温泉まんじゅうとか手拭いとかいう単語がリストアップしてある。
「お父さんと二人で欲しいお土産を書いてみたの。今度アルくんと二人で温泉旅行なんでしょ?」
「へ…?」
温泉旅行?
僕はアルと温泉に行くの?
「いいわよねぇ。お父さんに連れていってってお願いしようかしら」
「…………………」
アルはもう母さんに話してたんだ…。
しかも行き先まで。
どうしよう、アルには知らないフリをしておいた方がいいかな?
あんなに嬉しそうに、当日のお楽しみですって言ってたんだし、驚いてあげないと…だよね。
「あるものだけでいいから、買ってきてね。お小遣いは奮発してあげるから」
「うん…わかった」
母さんはアルから二人で温泉旅行するって聞いて、どう思ったんだろう。
僕の誕生日が近いことは知っているだろうし…男二人で温泉なんて、なんだか怪しいよね!?
あぁ…怪しんでなければいいな。
とりあえず僕にはできることもないし、旅行を楽しみにしよう!
どんな温泉旅館に連れていってくれるのかな?
アルの浴衣姿がどんな感じになるのかを想像するだけで楽しみ。
お小遣いもたっぷり貰えそうだし、今年は今までで一番の最高の誕生日だ。
僕は母さんに渡されたメモを丁寧に折って、大事に財布に仕舞った。
-END-
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