大人のチョコレート

しおりを挿む



「せやろ。借り物やけどな」

「勉強の時に着たらよさそうだね」

「うん、今日から着て勉強すんねん!」


 いいな、勉強はあんまりしたくないけど、僕も欲しいな。

 あ…でもアルと暮らすために大学に合格しないとだから、したくないなんて思わずにがんばらないと。

 とりあえずアルとの旅行が終わったら、琳に相談して勉強計画を立ててみようかな。

 勉強熱心な琳みたいに日曜日は一日中部屋で勉強!なんてことはできないけど…。


「…って琳、今日も勉強するの!? もうすぐ試験だからって、根付いたリズムを崩すと良くないよ」

「せやけど、はよこれ着たいんや」

「あ…そうなんだ」


 この場合は、勉強熱心と言うよりただ“どてら”を着たいだけみたいだ。

 ちょっと呆れながらも袋の中を嬉しそうに覗き込む琳を観察していたら、やがて車が緩やかに止まった。

 牧野さんが車をサッと降りて、琳がいる側のドアを開ける。


「やっぱり外は寒いな!」


 琳に続いて降りると、冷たい風がコートの中に入ってきた。


「琳、僕は先に帰るね!」

「あ…わかった」

「正太郎様、お気をつけてお帰りください」

「はい。送ってくれてありがとうございました!」


 最近、僕は様子を見て今みたいに先に帰ることがある。

 ちなみに今日は、琳が少し寂しそうな顔をしていたから。

 抱き合ったりキスしたりなんてできなくても、二人で少し話すだけでも気持ちが満たされたりするから。

 琳は僕と違って、週に一度しか牧野さんに会えないんだ。




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