大人のチョコレート ■しおりを挿む
「なんやねん!あんまりケチケチしとったらハゲるで!」
「私はハゲたりなどしません!いい加減なことを仰らないでください!」
くだらなすぎる喧嘩を始めた二人に、溜め息が出そう。
実際、牧野さんは溜め息を吐きながら琳の背中を撫でている。
「もう…琳には今度紅しょうがの天ぷらを作ってあげるから」
紅しょうがの天ぷら…!?
焼きそばに乗ってるやつだよね、紅しょうがって。
「ほんまに!?」
「お好み焼きも焼いてあげる。だから今は琳が折れといて」
「うん、まかせとき。俺はアルと違て大人やしな」
「それは聞き捨てなりませんね!」
…また、くだらない口論が始まったよ。
思わず溜め息を吐いたら、偶然牧野さんも同時に溜め息を吐いていた。
それを牧野さんと笑い合いながら、僕は先にご飯を食べ始めることにした。
そしたらアルが僕と見つめ合う牧野さんに嫉妬をして、それを見た琳がまたアルを煽って…。
もうこれ以上ないってぐらいに呆れた顔の牧野さんが琳の太ももをつねるまで、アルと琳のくだらない口喧嘩は終わらなかった。
◆ ◆ ◆
牧野さんに怒られて拗ねた琳が鬱陶しかったけれど、僕がアルとお別れのキスをしている間に仲直りしたみたい。
どうやら琳は、牧野さんになにかをもらったみたいだ。
帰りの車の中でわざわざ袋を開けて僕に見せてくれた。
「これは“どてら”やねん」
「なにそれ?」
「中綿が入ってる部屋着やで。めっちゃぬくいねん!ちょっと触ってみ?」
「あ…本当だ!着たらあったかそう!」
綿が中に入った、こたつに合いそうな雰囲気の服だ。
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