大人のチョコレート

しおりを挿む



 マグカップを乗せたトレイを持ってアルの背中を押しながらリビングに急いで入ると、ソファでふて寝をしていた琳からブーイングが上がった。


「遅いで!なにやってたんや」

「琳のことを失念してしまいました。すみません」

「どうせ正太郎とイチャついとったら、俺のことなんか記憶から抜けてしもたんやろ」

「その通りです」

「潔いな…まぁええわ。はよCD見せて!」

「わかりました。では、行って参ります」


 僕は苦笑しながらオーディオルームに行く二人を見送ってから、牧野さんがいるキッチンに向かった。

 実は牧野さんを手伝って、料理の勉強をするつもりなんだ!

 牧野さんみたいなプロ並みの腕前になるなんて僕には無理だけど、作業を見ているだけでも為になりそうだから。


「牧野さん、いますか?」


 キッチンに入ると、牧野さんは手際よく調理している真っ最中だった。


「おや正太郎様、こんにちは。カフェモカはお口に合いましたか?」

「こんにちは!お店で飲んだカフェモカより、ずっと美味しかったです」

「それはよかった…安心しました。では、これをお土産にお持ちください」


 牧野さんは調理の手を止めて、小さな紙袋を僕に差し出した。

 反射的にマグカップのトレイと交換するようにそれを受け取ってしまったけれど、中身がわからなくて僕は首を傾げた。


「それはカフェモカに使ったチョコレートシロップです。私の実家からたくさん届いたんですよ」

「そうなんですか。僕が貰ってもいいんですか?」

「是非。琳と一緒に召し上がってください」

「ありがとうございます!」




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