大人のチョコレート

しおりを挿む



「それなら、電車がいいな」

「電車…ですか?」

「…ダメ?」

「いいえ。では、車は極力使わずに行きましょう」

「うん!」


 もし時間がかかる場所なら、アルと駅弁を食べたいな。

 車だと絶対にできないことだから、アルも駅弁を楽しんでくれるはず。


「すっごく楽しみ!どこに行くの?」

「行き先は当日のお楽しみですよ」

「やっぱりアルは意地悪っ」


 でも嬉しいから、僕はアルにキスをしてから強く抱き付いた。

 今、すごく甘えたい気分なんだ。

 アルの胸元に顔を擦り付けるようにしていたら、僕の背中を撫でていたアルがクスクスと笑いだした。


「正太郎は甘えん坊ですね」

「だって…嬉しいんだもん」

「とても愛らしくて、離したくなくなりますね。私以外には甘えてはいけませんよ?」

「甘えないよ!アルだけ…」


 僕は別に甘えん坊じゃないし。

 こんなに甘えたくなるのはアルだけ。

 昔から、母さんにもあんまり甘えない子供だったんだから。

 あ…母さんには旅行のことをどう言おう?

 琳も行くなら正直に言うけれど、二人きりだとなんとなく後ろめたい。

 泊まりがけでアルに勉強を教わるとかでいいかな?

 …なんて、女の子みたいに親への言い訳を考えていると、アルが珍しく慌てた様子で小さく声を上げた。


「琳が待っているのを忘れていました!そろそろリビングに行きましょう」

「待たせてるの!? もう、早く行こう」


 僕は自分でアルの膝から下りて、アルの腕を引っ張って立たせてあげた。




- 30/36 -

[≪prev | next≫]



 ←Series Top





「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -