大人のチョコレート

しおりを挿む



 しばらく無言でアルのぬくもりを味わっていると、アルがそういえば、と話を切り出してきた。


「もうすぐ、正太郎が誕生した神聖な日がやってきますね」


 神聖な日なんて、また大袈裟だな。

 でも、ただの誕生日だよ、なんて言ったらいろんな言葉が返ってきそうだから我慢しよう。


「やっと17歳だ」

「実はその週末に、小規模ですが旅行を計画しているんです」

「えっ!?」


 旅行ってつまり、旅だよね?

 泊まりで遊びに行くって意味だよね?

 アルは日曜日に仕事があるのに?


「日曜日は休みにしましたから、正太郎は心配なさらないでください」

「いいの? 僕のために…」

「当然です」

「嬉しい!」


 一緒に暮らすことといい、旅行といい、今日は嬉しい計画ばっかり聞いてる!

 どこに連れていってくれるんだろう…。

 すごく楽しみで、今日から眠れなくなったらどうしよう!


「旅行にはみんなで行くの?」

「邪魔者が必要ですか?」

「ううん、二人がいいっ」


 僕は思いっきり首を横に振った。

 そりゃみんなで行くのも楽しいけど、誕生日の旅行ならアルと二人だけがいい。

 アルみたいに神聖だなんて思わなくても、恋人がお祝いしてくれる誕生日だから、特別な感じがするし。


「ふふ…安心しました」

「もう。アルの意地悪」


 冗談混じりに軽く睨むと、微笑んだアルがキスをしてくれた。


「本当の意味で二人です。ですから、運転手には牧野以外の人間を使うことになります。それでもよろしいですか?」


 車で行くのか…僕の誕生祝いだから、我が儘を言ってみようかな?




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