大人のチョコレート ■しおりを挿む
「そうですね。ですが、転職をされては私が困ります」
「ご飯なら、僕が作ってあげる!最近…母さんを手伝いながら練習してるんだ…」
勢いに任せて言ってみたけれど、牧野さんはアルの秘書だった!
ご飯を作ってくれるところばっかり見てたから、うっかりしちゃった。
恥ずかしい…。
それに、練習なんて言ってもまだまだがんばらないと…なのに。
「正太郎のご飯が毎日食べられるなんて、夢みたいです!…では、正太郎を私にください、とお願いに伺わなければなりませんね」
「そ、そんなの」
そんな言い方だと、お嫁さんにくださいって挨拶するみたいじゃないか。
僕は男だから、アルのお嫁さんにはなれないのに。
「いずれにしても、高校を卒業したら正太郎とここで一緒に暮らしたいので、ご挨拶には伺いますが」
「えっ!?」
ご挨拶って?
一緒に暮らすって!?
「どうかしましたか?」
「…ううん。びっくりしただけだよ」
アルが僕とのことをそんな風に考えているなんて…。
嬉しい!僕、アルと一緒にいられるようにがんばる。
まずは勉強をがんばって大学もちゃんと決めよう。
「正太郎…」
「? …っん」
決意を新たにしていると、不意に呼ばれて唇を塞がれた。
持っていたマグカップはいつの間にかアルに奪われていて、僕は深くなっていくキスに素直に応えた。
でも、なんだかいつものキスとは違う。
少し不安そうなキス。
「……急にこんな話をしてしまって、申し訳ありません。正太郎は…どう思いますか?」
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