大人のチョコレート

しおりを挿む



 ソファに座ったアルの膝に下ろされて、向かい合うように座る。

 するとアルの顔が近付いてきて、薄い唇が僕のそれに重なった。

 すぐに離れては啄むようにまた触れ合う、子供みたいな可愛いキスだ。

 それでも、ちゅ、ちゅっとリップ音が響いて、僕の気持ちを昂らせていく。


「ん、ん…アル…」


 だけど、唇を吸われるだけなんてもどかしくなってきて、僕は自分からアルの口腔に舌を差し入れた。

 アルの唇が素直に招き入れてくれて、長い舌が歓迎するように絡まってきた。


「…っ!?」


 けれど、アルは何故かすぐに離れる素振りを見せた。

 僕はそれが嫌で、アルの後頭部に手を回して抱き寄せるようにキスを続ける。

 アルの口の中で二人の唾液が混ざり合って甘くなっていく。

 それを飲むのも、アルが飲み込む音を聞くのも、興奮する材料になるんだ。

 やがて息が苦しくなってきたから唇を離すと、アルは焦ったような表情で僕が食べたチョコの箱を開けた。


「やはりこれを食べたのですね!?」


 アルの怒っているような顔に、僕は思わず萎縮する。

 もしかして、大切なチョコだったのかな。

 食べる前に確認すればよかった。


「ご…ごめんなさい……僕、」

「あぁ…すみません。怒っているわけではありません。どうか怖がらないでください」


 優しく抱き締められると、強張った身体の力が抜けてきた。

 僕の背中を撫でるあったかい手も、ほんのり香水が混じったいい匂いも、いつもの優しいアルだ。




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