大人のチョコレート ■しおりを挿む
ソファに座ったアルの膝に下ろされて、向かい合うように座る。
するとアルの顔が近付いてきて、薄い唇が僕のそれに重なった。
すぐに離れては啄むようにまた触れ合う、子供みたいな可愛いキスだ。
それでも、ちゅ、ちゅっとリップ音が響いて、僕の気持ちを昂らせていく。
「ん、ん…アル…」
だけど、唇を吸われるだけなんてもどかしくなってきて、僕は自分からアルの口腔に舌を差し入れた。
アルの唇が素直に招き入れてくれて、長い舌が歓迎するように絡まってきた。
「…っ!?」
けれど、アルは何故かすぐに離れる素振りを見せた。
僕はそれが嫌で、アルの後頭部に手を回して抱き寄せるようにキスを続ける。
アルの口の中で二人の唾液が混ざり合って甘くなっていく。
それを飲むのも、アルが飲み込む音を聞くのも、興奮する材料になるんだ。
やがて息が苦しくなってきたから唇を離すと、アルは焦ったような表情で僕が食べたチョコの箱を開けた。
「やはりこれを食べたのですね!?」
アルの怒っているような顔に、僕は思わず萎縮する。
もしかして、大切なチョコだったのかな。
食べる前に確認すればよかった。
「ご…ごめんなさい……僕、」
「あぁ…すみません。怒っているわけではありません。どうか怖がらないでください」
優しく抱き締められると、強張った身体の力が抜けてきた。
僕の背中を撫でるあったかい手も、ほんのり香水が混じったいい匂いも、いつもの優しいアルだ。
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