大人のチョコレート ■しおりを挿む
「ここが…正太郎の部屋なのですね」
部屋に入って開口一番、アルがしみじみと呟いた。
どこか変なところがあるのかな?
二年になってすぐに買ってもらった参考書が綺麗すぎるとか?
勉強しなきゃいけないとは思うんだけど、なかなかなんだよ…。
僕は勉強机にアルから貰った花瓶を置いて、中の花を簡単に整えた。
これで飾り気のない僕の部屋が随分良くなった気がする。
すごく綺麗な花だ…なんていう花なのかは知らないけれど。
満足して振り返ると、アルは僕のベッドを観察していた。
「正太郎は毎日、このベッドで眠っているのですね」
「うん…」
アルの部屋の飛び跳ねても音がしないキングサイズのベッドとは違って、二人で乗っただけでギシギシ鳴りそうな小さなシングルベッド。
…って、今は二人で乗ったりなんかしないからね!
この部屋は防音の壁じゃないし、家の中に父さんも母さんもいるのに。
なにを考えているんだろう、僕は!
赤くなった顔をごまかすように紅茶を一口飲んだら、アルがベッドから僕に視線を移した。
「お手数ですが、いつものように横になっていただけますか?」
「えっ、寝る時みたいに?」
「はい。お願いします」
僕は躊躇いながらも、アルの期待に満ちた目に逆らえなくてベッドに入った。
なにをされるんだろう…。
まさか襲われたりなんかしないよね。
お昼を食べたらすぐにアルのマンションに行くし、アルは紳士だし…。
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