大人のチョコレート ■しおりを挿む
僕はさっきのエビをボウルから拾って、殻剥きを再開した。
本当にヒヤヒヤした。
安心したら一気に疲れたし…。
それにしても、なにも言わないでいてよかった。
やっぱり危ない時は動かずに様子見が基本だよね。
「エビはなにになるの?」
安心した途端に、今日のお昼の献立が気になってきちゃった。
だってこれ結構いいエビなのか、大きいし身がしっかりしているんだ。
「正太郎が好きなエビチリよ」
「じゃあ今日は中華?」
「そうよ。アルくんのお口に合うといいんだけれど」
「母さんのご飯は美味しいから大丈夫だよ」
すごく楽しみだ。
アルと僕と母さんと父さんの四人でご飯なんて、なんだかアルを恋人ですって紹介するような気分だけど。
でもただご飯を食べるだけだから全然緊張はしてない。
もうバレてるかと思った瞬間に、今日の緊張を全部使い切ったみたいだし。
その後、僕はピーマンの千切りをさせてもらったり、野菜の炒める順番なんかを教わったりした。
適当に全部フライパンに入れて炒めるんじゃダメらしくてびっくりした。
下ごしらえが終わったら、あとは母さんに任せるしかないから僕は自由になる。
やっぱり今日は気合いが入ってるせいで品数も多いみたいだ。
必然的に、その分仕事が多くなるから体力が奪われるわけで…。
アルが来るまでまだ時間があるから、僕はリビングで居眠りをすることにした。
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