君の名前を書きたくて ■しおりを挿む
常に男女問わず、そういう意味合いで私に近付いてくる者がいたし、私もその中から適当に相手を見つけた。
さすがに男を相手にしたことはないが、この先もそれでよかったし、結婚なんてまだ見えないけれどどうにかなる。
問題があるなら当主かお母様が誰かを見繕うだろう、なんて、漠然と考えていた。
「私とお祖父様の話は、記憶するぐらい聞かせたでしょう? 実は貴方のお父様も、お母様と素敵な恋愛をしたのよ。 だから、アルとダレンのような素敵な息子たちが産まれたんだわ」
そう言われて、二つ年下の生意気な弟を思い浮かべた。
私と違って過剰な努力はせず、年齢に見合ったことを楽しんでいる弟。
年齢の通り、まだミドルスクールに通っている。
勉強はできるのに、ステップを飛ばさずに毎日を楽しむダレンをバカにしながらも、私はそれを少し羨ましく思っている気がする。
「貴方は長男だからと期待を背負いすぎているんじゃないかと心配なの。 本当は、まだハイスクールに通っている年齢なのよ? もっとのびのびと遊んだり恋をしたり悩んだりしてほしいの。 素直じゃない貴方のお父様も、きっとそう思っているわ。 私のお願いを聞くと思って、一度日本の学校を見てきてくれないかしら。 成人したらアジア方面を任される予定なんでしょう? 日本の学校もそれに含まれるわね」
あぁ、この大和撫子も立派なクリフォードの人間だな。
計算ずくですか? と笑ってみせた私に、それはどうかしら、と彼女は少女のように可愛らしく笑った。
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