閑話*ある晴れた平日 街中編

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◇邪魔者 Side陽平


 琳がおにぎりを食べ終わったのを確認して、俺は時計を見ながら立ち上がった。

 アルが帰るまで、時間は充分にある。

 確か今日は、正太郎と寄り道をすると言っていたから。


「琳の好きなお店でいいよ」

「わかった」


 今が真冬でなければ、どこかでテイクアウトして公園で食べるんだけどね。

 でも、あの公園は琳が嫌がるかな。

 それを虐めるのも楽しそうだけど。


「ここでええかな?」

「うん、いいね」


 セルフのカフェで気軽なお店だ。

 俺は琳を座席に促そうと、僅かに込み合う店内全体を見渡した。

 その中に見知った顔を見付けて、内心舌打ちをする。

 俺とまともに目が合ったその女は、俺に連れがいることにも構わず駆け寄ってきた。


「牧野さん、こんにちは」

「こんにちは、遠藤さん」

「あの、よろしければ私と!」

「いいえ。連れがいますし、他にも座席が空いてますから」


 笑顔で申し出を断って、俺は琳の背中を押した。

 奥まった場所まで誘導して席に着くと、黙っていた琳が口を開いた。


「ええんか? 寂しそうやったんやけど」

「琳は恋人との食事に、邪魔者を混ぜる趣味があるわけ?」

「こっ!な、ない…」


 真っ赤になって俯く琳が可愛い。


「ふふふっ…。琳はなんでもいい? 適当に買ってくるけど」

「え、俺が行くで?」

「琳は参考書でも見てなよ」


 本当は、未だに俺と話したそうな彼女を避けるためなんだけど。

 俺はコートを脱いで椅子の上に置くと、琳の頭を撫でて列に並んだ。

 例の彼女はこの近くにある、うちのグループの会社の秘書課の人なんだけど、すごく積極的で困っている。

 仕事の話をしていてもプライベートに踏み込んでくるところが、すごく鬱陶しい。

 って言えたらいいんだけど。

 そういえば、琳に公園でイタズラをした時も彼女のせいでちょっと苛ついていたな。

 あの時の琳の反応が可愛くて、すごく癒されたんだった。

 俺は掲げられているメニューを見ながら、あの時の琳を思い出していた。




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