閑話*ある晴れた平日 街中編

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◇寝坊の末路 Side琳


 みんながきっちりマフラーして、コートのポケットに手を突っ込んで歩くような真冬の寒い日。

 俺はコートを腕に引っ掛けて、軽く汗をかきながら走った。

 それもこれも、俺の相方が気持ちよくてなかなか離れられへんかったんが原因や。

 なんで毛布ってあないに気持ちええんやろな。

 ふわふわやし肌触りもええし…頬擦りしてて気付いたら9時やで、ありえへんわ。

 もちろん寝坊や!

 俺は髪をセットする間もないままで、予備校まで全速力や。

 動いてる電車の中でも走ってしまいそうになるほど、時間ギリギリやったんや。


「お、おはよ…!」


 間に合った!

 密かに陸上部やった俺の脚力は、まだまだ現役やな。


「りーん!ギリギリだぞ」


 息切れしてる俺をヘッドロックで迎えよったのは、クラスで一番仲のええ宮原聡。

 一個年上やけどすぐに仲良くなった奴や。

 …って、苦しいしそれどころやないな。


「あぅ…さと…る、苦し…」

「喘ぐなよ。変な気分になるだろ?」


 アホかこいつは!

 なにがどないなって“喘ぐ”やねん!

 俺は聡の太ももをきつめにつねって、漸くヘッドロックから抜け出した。


「いてー!琳の愛情表現は激しいな」

「そんなん言う聡には、しばらくエッチお預けや」


 そんな冗談を言いながら、俺は聡の隣の椅子に座った。

 勉強道具出す前に、まずは鞄の中からアルミホイルに包まれたご馳走を出す。

 出掛けに慌ててたから、おばちゃんが朝ご飯っておにぎり持たせてくれたんや。


「琳、時間切れ」

「え?」


 ホイルを剥きながら聡の声に前を見たら…もう講師が来てた。

 俺は聡に笑われながら、腹の音をお供に授業を受けることになった。

 まぁ寝坊した俺が悪いんやしな…。




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