閑話*ある晴れた平日 高校編

しおりを挿む



◇苦手な数学 Side正太郎


 アルがさっき持っていたものは、たぶん僕宛の手紙だ。

 僕は実際に手にしたことはないけど、一度知らない先輩に訊かれたことがあるんだ。

 手紙は読んでくれてる? って…。

 僕はそんなこと知らないから、知らないって答えたけど。

 そしたらいきなり腕を掴まれて、体育館の裏に連れていかれて、好きだ付き合ってほしいって言われた。

 僕はアルが好きだから、好きな人がいますって断った。

 アルは僕がそういう風に告白とかされるのを、防いでいるのかな。

 僕は絶対ちゃんと断るのに、アルは心配性だから。


「御厨!」

「へっ?」

「へ? じゃない。前に出てあの例題を解きなさい」


 なんで僕が…。

 数学はいつも、前から順番に当てるのに。

 どうしよう、こんなのわかんないよ!

 チラッとアルを見ると、僕より困った顔をしている。


「先生!」


 アルが手を挙げながら立ち上がった。


「ダメだ」

「お願い致します!」

「御厨のためにならないだろう」

「ですが…!」

「心配なら、そこで応援でもしていろ」


 これは結構よくあることだから、先生も慣れてしまっている。

 尚も食い下がるアルに、先生は律儀に溜め息を吐きながらも相手している。

 僕はその隙に、一番前の子から使う公式を教えてもらった。

 それさえわかれば大丈夫。

 まだこれは、二学期の復習だから。

 なんとか数式を並べて、たぶん合ってる答えを導き出せた。


「せんせーい!」

「できたか?」


 僕は頷いて席に戻ると、アルの方を見てこっそり笑った。

 アルは黒板の解答を見て、親指を立てた。

 正解らしい!

 でも、真面目に勉強しないとヤバいな。

 今月の実力テストの前に、アルにいっぱい教えてもらおうっと。




- 2/10 -

[≪prev | next≫]



 ←Series Top





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -