帰国した恋人との年始の過ごし方

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 なんとなくバックミラーを見たら、運転手さんと目が合ってしまった。


「恥ずかしいよ…」

「大丈夫です。彼らは客のプライバシーなど、気に留めませんから」


 気に留めなくても、恥ずかしいものは恥ずかしいんだけど…。

 いくら見つめても、アルは折れてくれそうにない。

 暴れても無駄みたいだ。

 僕は諦めて、琳がくれたクッキーを鞄から出して一口かじった。

 サクサクしてて、すごく美味しい!


「アルも食べて!」


 手に持っていたクッキーをアルの口に捩じ込んだ。


「…あ、美味しいですね」

「うん、大騒ぎして作っただけのことはあったね」

「あれは騒ぎすぎですよ。鼓膜がおかしくなりそうでした」


 アルが苦虫を噛み潰したような顔をした。

 まぁ気持ちはわかるけど。

 琳のうるささについて二人で話しながらクッキーを食べていると、あっという間に神社に着いてしまった。

 思った通り人はまばらで、ゆったり参拝できそうだ。


「正太郎、人があまりいませんから正しい作法で参拝をしましょう」

「アルは知ってるの?」

「はい。昔、お祖母様に教えられました」


 すごい…。異国のお作法を覚えるなんて、僕には無理だ。

 というか、日本人なのに参拝のお作法もよく知らない。

 僕は、アルに倣って動いた。

 鳥居を潜るところからすでに始まっているらしい。

 ゆっくり歩いて、僕たちは手に水を掛ける場所にやって来た。


「ここは、手水舎という場所です。まず右手で柄杓を持って左手を清めます」

「はい」


 思いっきり外国人なアルに僕が参拝のお作法を教わっている図は、かなり滑稽なんだろうな。




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