帰国した恋人との年始の過ごし方 ■しおりを挿む
「…? どうしたのですか?」
「な、なんもない…!アルはイケメンやなーって言うてたんや」
「はあ…そうですか」
腑に落ちないといった表情のアルをごまかすように、僕はその腕を引っ張った。
「アルはフロントでなにをしてたの?」
「そのことを含めて、食事をしながら話しましょう。どのお店がいいですか?」
「ご飯やったら、ファミレスに行こか」
さすがマイペースな琳だ。
当然ホテル内のレストランから選ぶのだと思っていたアルは、驚いて瞠目している。
僕も昨日の高いカレーライスが落ち着かなかったから、ファミレスで賛成。
だってあのビーフカレー、3,675円もしたんだよ?
確かにすごくおいしかったけど、母さんのカレーライスみたいに気兼ねなくがっつり行けないからダメだ。
「ファミリーレストランなどで、よろしいのですか?」
「ファミレス舐めとったらあかんで!わりと美味いんやからな。とにかく、高級店は落ち着かんから却下や」
「琳…かっこいい!」
「正太郎!?」
「やっと俺の良さに気付いたんか」
僕は大きく頷いた。
こんなにキッパリと言いたいことを言えるなんて、すごくかっこいいと思う。
僕もアルに流されてばっかりじゃなく、たまには庶民的なご飯を提案しよう。
少し落ち込むアルをなんとか慰めて、僕たちはさっそくタクシーでファミレスに向かった。
「今日の俺はハンバーグやな」
「僕も!」
やっぱりファミレスのハンバーグは、安くて美味しくて遠慮なく食べられていい感じだった。
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