帰国した恋人との年始の過ごし方 ■しおりを挿む
◇Side 正太郎
次の日、アルとホテルのロビーに降りたら、琳が不安そうな顔で待っていた。
アルがフロントに向かうのを見送って、琳に近付く。
「あ…正太郎っ」
「琳。おはよう」
「怖いわここ!座ってたら、どちらをご利用ですかーって訊かれた!」
「なにそれ?」
「泊まらんねやったら、来たらあかん空気やで!」
「それはないと思うけど」
きっとホテルマンが、親切に案内してくれようとしただけだよ。
その前に、琳は今日ここに泊まるし。
「ええから周り見てみ!不安になるで」
琳に抱き付かれて、改めて周りを見回す。
…と、本当に不安になってきた。
別に怖がらなくてもいいんだろうけど、確かに僕らのカジュアルな服装は浮いてて、来ちゃいけないような気にさせられる。
なんだか、細かいところまでやたら豪華な造りだし、お客さんもホテルマンもみんなお上品な気がするし。
僕はずっとアルに任せっきりだったし、昨日は特別な事情があったせいで何とも思ってなかっただけみたいだ。
「琳っ!一人で待たせてごめんね」
僕が琳なら、ホテルの向かいの歩道で待ちたくなる。
中で待っていられた琳は強いなぁ。
「うん…ええんや。それより、お弁当はどないやった?」
「すごく喜んでくれた!琳のおかげだよ。ありがとう」
「よかったな!」
お弁当の話をした時、本当に泣いて喜んだことも報告しておいた。
それに琳がお腹を抱えて笑う中、真面目な顔で戻ってきたアルに僕も吹き出してしまった。
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