帰国した恋人との年始の過ごし方 ■しおりを挿む
「お腹すいた…」
「もう遅いので、ルームサービスを手配しましょう」
正太郎を抱き上げてベッドを降り、部屋を移動する。
メニューを手渡すと、それを捲った正太郎が溜め息を吐いた。
ディナーの時間は過ぎているから、メニューはあまり豊富ではない。
正太郎の好きなものがなかったのだろうか…。
正太郎のためならば、メニューになくても用意させるつもりだが。
「高い…」
「どうしたのですか?」
「カレーライス…っていうか、ビーフカレーの値段が高いよ。そういえば、この部屋もすごく高そうだ」
「……そんなこと、ありません」
値段は把握していないが、一番いい部屋を押さえたのでそれなりにかかるだろう。
しかし、正太郎との甘いひとときに値段は付けられない。
つまりこの部屋に宿泊するために支払うお金など、正太郎と過ごす時間からすれば価値がないも同然だと…。
「むー…」
「それよりも、食事を頼みましょう。正太郎は、ビーフカレーでよろしいのですか?」
「えっ!う、うん」
「他にも欲しいものがあったら、いくらでも用意させますから。メニューになくても大丈夫です」
私は正太郎からメニューを受け取ると、受話器を取ってフロントを呼び出した。
ビーフカレーとサンドイッチ、あとは適当にサラダや飲み物、フルーツの盛り合わせを手配する。
「アル」
「どうしたのですか?」
「あの…」
正太郎は、私の膝に手を置いて恥ずかしそうに見上げてきた。
これは、私の好きに解釈していいのだろうか。
少々戸惑いながら、正解であることを願って正太郎を膝に乗せる。
すると正太郎は、はにかんでキスをしてくれた。
正解だったようだ!
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