帰国した恋人との年始の過ごし方 ■しおりを挿む
◇Side アル
腕の中の宝物が微かに動いた気がして、私はそれを抱き締める腕に少し力を込めた。
「正太郎」
「んん、アル…」
寝起きの舌足らずな正太郎は、甘えるように私の胸元に頬を擦り寄せてくる。
たまらない…何故こんなにも愛らしいのだろう。
サラサラの髪にキスをすると、目を閉じたままで顔を上げた正太郎は、唇へのキスをねだってきた。
その魅力的な唇を遠慮なく味わうと、正太郎の大きな目がパッチリ開いた。
「ん、あ…」
「おはようございます」
「おはよ…う」
目覚めのキスが効いたのか、正太郎は頬を赤く染めて私の胸元に顔を埋めた。
きっと、夢の中でキスをねだっていたつもりが、現実だったと気付いたのだろう。
「正太郎、顔を見せてください」
「は、恥ずかしいからダメ」
「とても可愛らしいおねだりでしたよ?」
「アルは意地悪だ…!」
「意地悪などではありません。事実なのですから」
臆することなく言うと、正太郎が隠していた顔を上げた。
「バカ」
「ふふっ…正太郎が可愛いのは常識です」
もう一度キスを交わして、私は正太郎を拘束する腕を緩めた。
「お腹はすきませんか?」
部屋に入ってすぐ始めたセックスの後、正太郎は気絶するように眠ってしまった。
いくら我慢の限界だったとは言え、激しくしすぎてしまった。
少し後悔しながら正太郎をお風呂に入れて丁寧に洗い、抱き締めて眠って今に至る。
そういうわけで、私たちは正太郎が作ってくれたお弁当以降は何も口にしていない。
「今何時?」
「夜の十時です」
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