帰国した恋人との年始の過ごし方 ■しおりを挿む
『さっきの、もしかしてアル!? ごめんやで!後で登録しとくわ!』
「はい…よろしくお願いします」
何故、琳はこんなに元気なんだ!
『あっつ!朋ちゃん!ちょ、それそのまま冷ましといて!先に電話済ましてくるわ!』
「…………………」
うるさい。
もう、元気などでは済まされないな。
痛む耳から携帯電話を離すと、正太郎の溜め息が聞こえた。
「琳はうるさいね…僕にまで聞こえるよ」
呆れ顔の正太郎が、コートの中に手を忍ばせてきた。
本当に可愛い…早く用件を伝えてしまいたいのに、琳は何をしているのか。
『ごめん!もうええで。なんや?』
「…明日のホテルのことです。私たちと同じホテルを押さえてあります。Tホテルですが、わかりますか?」
『あっ…うん、』
「明日の午前11時、ロビーに来ていただきたいんです。そこで昼食を摂りながら、詳しい計画をお話しします」
『わかった!ネットで調べたら行き方は大丈夫や』
「それでは明日、お待ちしています」
琳もなにかと忙しそうだし、私も我慢の限界なので手短に通話を済ませた。
どうせ、顔を見て話した方が伝わりやすいだろうしな。
携帯電話を閉じて正太郎を抱き締めると、正太郎も腕に力を込めてくれた。
「アル…」
「どうしましたか?」
「初詣、明日にしてもいい?」
…正太郎も同じことを考えていたなんて。
今日は嬉しいことばかりだ!
神にいくら感謝してもしたりない。
「私も今、それを提案しようと思っていました」
私はすぐにタクシーを呼んだ。
恥ずかしそうに俯く正太郎にキスをしたくなったが、我慢した。
こんなところでして、止まらなくなっては困るからな。
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