帰国した恋人との年始の過ごし方 ■しおりを挿む
公園内で食後の軽い散歩をしながら、正太郎を見下ろす。
初詣に誘ってもらったが、明日にしたいと言ったら正太郎は怒るだろうか。
欲望に直結しすぎていると呆れられるだろうか。
だが、恐れてなにもしないでいると、成功するものも成功しない。
言うだけ言ってみようか。
だが、私には先にすべきことがある。
「正太郎、琳の電話番号を教えていただけませんか?」
「琳の?」
「ええ。正太郎に夢中になる前に、明日の計画を伝えておかなければなりません」
正太郎は真っ赤になって、琳の電話番号を表示させた携帯電話を差し出してきた。
それには、私が贈ったストラップが付いている。
ダイヤモンドが美しく輝いているが、やはり正太郎の笑顔には敵わないな。
私は、正太郎が寒くならないように懐に引き寄せて、琳に電話を掛けた。
「は、恥ずかしいよっ」
「誰もいません。それでも恥ずかしいのなら、私に密着していればいいのです」
腕の中で身動ぐ正太郎の旋毛にキスをしたら、おとなしくなってくれた。
「…………………」
なかなか出ない。
忙しいのだろうか?
だが、私はこれから初詣を明日にすることを提案して、正太郎をホテルに連れ込むつもりだから今しかない。
「琳は知らない番号だと警戒するから、僕の携帯から掛けるよ」
諦めて電話を切ったら、すぐに正太郎が電話を掛けた。
最近は物騒だから警戒する気持ちはわからなくもないが、掛かってきた電話を無視するのはどうかと思う…。
「あっ、琳。アルが琳に話をしたいって」
苦笑いの正太郎から携帯電話を受け取る。
「こんにち…」
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