帰国した恋人との年始の過ごし方 ■しおりを挿む
たぶんアルに包み込まれたことと、僕の体温が一気に上がったことが原因だ。
でもその代わりにアルに対する緊張が増幅して、ドキンドキンと心臓がうるさい。
お弁当の評価への緊張と、アルに対する緊張とで胸が苦しい。
「正太郎? 緊張…しているのですか?」
「…久しぶりだからかな。会う前から、すごく緊張してた」
お弁当の味も心配だ、とは言えなかった。
「私もです。まるで転入した日の朝のように、正太郎と何を話そうかと考えました」
転入した日と言えば、初対面での告白だ。
ああなった経緯はもう聞いたけれど、アルを知るほどにあれはアルらしくない言動だと思った。
「あれは…本当に“変な外人”だったよね」
「決まらなかったので本能に従ったのです。正太郎と目を合わせたら、想いを伝えずにはいられませんでした」
「すごいインパクトだったから、成功?」
「あの愛の告白はスマートではありませんでしたね。ですが、正太郎が今この腕の中にいるので成功です」
あの時のことを思い出して笑っていたら、緊張がほぐれてきた。
僕からもアルに抱きついて大きく息を吸い込んだら、アルのいい匂いで満たされて甘えたくなってきた。
でも今キスとかしたら、なんだかいろいろヤバいことになりそうだ。
「アル…お弁当、食べよっか」
少し身体を離して顔を上げたら、アルは少し赤くなった顔で笑った。
初詣は明日でもいい?
…とか言ったら、アルはどう思うだろう。
部屋で二人きりになりたいなんて言ったら、エッチな奴だと思われるかな。
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