帰国した恋人との年始の過ごし方 ■しおりを挿む
「正太郎、ありがとうございました」
「ううん。お年玉があるし!」
「オトシダマ?」
「お正月に、大人がお小遣いをくれるんだ」
「あぁ!小さな頃にお祖母様からいただいたことがあります。日本の新年は、楽しみがたくさんありますね」
アメリカのお正月はつまんないのかな。
そもそも宗教が違うから、特に初詣なんかしたことがなさそう。
僕は宗教を意識して初詣なんかしたことがないけれど、参拝だからたぶん宗教的なことだよね。
気軽に誘ってみても大丈夫かな?
僕は二回目になるけど…おみくじもまだだし、僕のお願い事はまだしていないから、いいってことにしよう。
「アル、初詣に行ってみる?」
「是非行きたいです!ですが、先にこのご馳走をいただきましょう」
アルは、お弁当が入っている方の鞄を掲げた。
うっ…いい感じで忘れてたのに。
また緊張してきたよ。
手を引かれてタクシーに乗せられて、やって来た場所は大きめの公園。
寒いけど、緊張でそれどころじゃない。
周りには人がいなくて、外でお弁当を食べることが季節外れなことなんだと思い知らされる。
「ごめんね、こんな季節外れなこと…」
外でお弁当を食べだすのは、大抵はお花見シーズンからだよね。
「季節など関係ありません。それどころか私は、正太郎と二人きりになれたので、むしろこの季節でよかったと思います」
「あっ…アル…」
アルにきつく抱き締められると、寒さをまったく感じなくなった。
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