帰国した恋人との年始の過ごし方

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「お弁当、作ってきた…んだ」

「え…」


 アルの高そうなコートとか、鞄とか腕時計を見ていたら、すごい勢いで後悔が押し寄せてきた。

 やっぱり、アルにはこんなチープなお弁当は合わないかもしれない。


「あ、あの…アルには合わない、中身で…。
 でも、アルに貰ったプレゼントの、お返しがしたくて、僕…」

「合わないとはどういう意味ですか」

「だ、だって、おにぎりとか…卵焼きとか。だから…」

「正太郎が、この手でおにぎりを握ってくださったのですか?」

「うん…」


 アルの手に力がこもった。

 手を握られていたから、ちょっと痛い。

 涙が出そうで伏せていた視線を上げると、アルは祈るように目を閉じていた。


「あぁ…私はこんなにも幸せでいいのでしょうか。今、この地球上に生息する、どんな命あるものよりも幸せです!」

「ちょっと、アル…」


 なにこの人、ちょっと泣いてる…!

 僕は、慌ててポケットから出したハンカチをアルに押し付けた。


「すみません。感激のあまり、涙が…」


 琳が言ってたことが、現実になってしまった。

 でも食べて泣くなんてことは、さすがにないだろう。


「お弁当の中身は、本当にたいしたものじゃないんだ…」

「正太郎が作ってくれたのですよ? どんな一流シェフが、どんないい食材を使って調理をしても敵いません!」

「そ、そんなっ」


 あんな焦げた卵焼きや、いびつなおにぎりを見もせずに言わないでほしい!


「どこか、落ち着ける公園でいただきましょうね」

「うん…」




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