帰国した恋人との年始の過ごし方

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 恥ずかしくて思わず胸元の鞄で顔を隠したけれど、一瞬だけアルの最高の笑顔を見てしまった。

 当然だけれど、足音が静かにこっちに近付いてくる!

 カツカツという足音に、心臓の音がリンクする。

 なにこれ!心臓がおかしくなりそう!


「正太郎…やっと会えました」

「あ、あの…」


 アルと会うの、こんなに恥ずかしかったっけ?

 アルがアメリカに行くまでは、普通に会ってたよね?

 なんでこんなに照れるんだろう!


「隠さないで。可愛い顔を、私によく見せてください」

「う…」


 頭を撫でられて、僕はしかたなく顔を上げた。


「やはり、写真よりも本物が一番可愛らしいですね」


 茹で蛸みたいに真っ赤になって視線を逸らしてる僕の、なにが可愛いんだか。


「アル…目立ってる、から」


 店員さんもお客さんも、みんなこっち…というかアルを見ている。

 そのアルにほっぺを撫でられている僕は、たまらなくいたたまれない。


「あぁ、すみません。正太郎しか見えていませんでした」


 そんなこと、真面目な顔で言わないでほしい。

 アルは僕の向かいの椅子に座ってコーヒーをオーダーをすると、未だに鞄を抱き締める僕の右手を握ってきた。

 うるさい心臓が、さらにドキリと跳ねる。


「その大切そうな物は、なんですか?」

「こ、れは…」


 どうしよう、恥ずかしいんだけど。

 なかったことにしたいぐらいだ。

 でも無駄にしたら、琳や姉ちゃんや、食べ物に申し訳ない。

 言うだけなら、いいかな。




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