帰国した恋人との年始の過ごし方 ■しおりを挿む
◇Side 正太郎
僕は初めて、一人で空港までやって来た。
どうもアルは、自家用ジェットで帰ってくるらしい。
やっぱりお金持ちは、やることが違う…。
僕が迷わないように、と待ち合わせ場所に指定された喫茶店で紅茶を飲みながら、抱えてきた鞄を覗き込む。
中には朝からがんばって作ったお弁当。
初めての料理は、意外に楽しかった。
琳と姉ちゃんに少し手伝ってもらったけど、作ったのは僕。
卵焼きは少し焦がしてしまったけど、えびのケチャップ炒めは簡単だったし、ほうれん草は母さんが茹でて冷凍してあるのをもらったからごま和えにするだけだったし…。
唐揚げを揚げる時に、油が怖くてちょっと手こずったぐらい。
おにぎりはいびつな形になってしまったけど、形は味に関係ない…よね。
「完璧やな!アルは絶対泣いて喜ぶわ。ほんで食べても、美味い美味い言うて泣く。正太郎が引くとか関係なしに泣くで」
なんて、琳が言ってたけど。
本当かな?
すごく簡単なメニューなのに。
あー…すごくドキドキしてきた。
どうしよう…なんて言ってお弁当を渡せばいいんだろう!
ただでさえ、アルに会うのは久し振りだから緊張してるのに!
お弁当の鞄を抱き締めて冷めかけた紅茶を飲んでいたら、お店の中が少し騒がしくなった。
もしかして、有名人が来たりしたとか?
野次馬してる場合じゃないんだけど、心を落ち着けようと顔を上げたら、有名人ではない長身の外国人と目が合った。
「あ…!」
一気に、顔と耳に血液が集まる。
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