帰国した恋人との年始の過ごし方 ■しおりを挿む
「わざわざプライベートジェットまで飛ばすしさ」
「…しかたないだろう。早く発ちたいのだから」
「最初は、あんなに面倒くさそうに日本へ飛び立ったくせにー」
「ダレン…あまりからかうな」
だんだん空港が見えてきた。
気持ちが逸るからか、あまりダレンの憎まれ口にも腹が立たない。
パーキングに車を停めた陽平が、こちらへ回って静かに車のドアを開けた。
「アルブレヒト様。私は明日の午後、日本に到着する予定ですので」
「あぁ、わかった。明日は琳に迎えに来てもらうといい」
そしてそのまま、琳と一晩ゆっくりすればいい。
「わかりました」
付いてこようとした陽平が持つバッグを奪うと、陽平は不思議そうな顔をした。
「ここまででいい。陽平…ありがとう。 私は、優秀な秘書でもある良い親友を持って幸せだ」
「いいえ。仕事に私情を挟んだので、秘書としては最低でございます」
「いや、私の秘書は牧野陽平以外には考えられないよ。…では、もう行く」
「ありがとうございます。どうか、お気を付けて」
律儀に直立不動で見送る陽平とウインドウを開けて手を振るダレンに手を上げて、私は空港に足を踏み入れた。
あとは機内で眠って目覚めれば正太郎に会える。
人目を憚らずに抱き締めたら、正太郎は怒るだろうか。
キスは…我慢しなければならないな。
宿泊するホテルはもう押さえてあるし、まず食事に行こう。
正太郎に寂しい思いをさせたのだから、なにかプレゼントをするのもいいな…。
あぁ…早く正太郎に会いたい。
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