帰国した恋人との年始の過ごし方 ■しおりを挿む
◇Side アル
こちらの新年なんて、あってないようなものだ。
日付が変わるとハッピーニューイヤー!と言い合って終わりなのだからな。
陽平がスケジュールを調整してくれたおかげで、私は一日の朝から仕事ができた。
そうでなければ今頃、退屈な日々と正太郎に会えないストレスで胃に穴が開いていたかもしれない。
私は一刻の猶予も無駄にせず、多少は無理を押して仕事に励み、漸くこの日を迎えた。
あぁ…正太郎。
もうすぐこの腕に、あの温かい身体を抱き締められるのだな。
早く、あの甘く柔らかい唇に触れたい…。
「アル、五月を楽しみにしていますよ」
「はい、お祖母様」
わざわざ表へ出てきて念を押すほど、楽しみにしているのだな。
久し振りに会った時も喜んではいたが、その時よりも顔色がいい。
私はお祖母様に、五月に正太郎を連れてくるという約束をした。
相談もせずに勝手に決めてしまったから、正太郎は戸惑うかもしれない。
だが、これは避けては通れない道だ。
いずれその日は来るのだから、早く済ませてしまうのは決して悪いことではない。
ひとまずお祖母様という味方がいるから、恐らく大丈夫…だといいのだが。
「お身体を大切にしてくださいね。お祖母様は、頼れる味方なのですから」
「もちろんですよ。彼とたくさんお話をしたいもの」
「また日本から、身体に良いものを送りますから」
「ええ、楽しみにしているわ。それでは気を付けて」
軽くハグを交わして、陽平が待つ車に乗り込む。
…と、車内に予想もしていなかった人間がいた。
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