帰国した恋人との年始の過ごし方 ■しおりを挿む
「お弁当のおかずのレシピ探したら、わりと簡単やったで。よかったら、朋ちゃんにも協力してもろたらええし」
「えぇっ!姉ちゃんに?」
姉ちゃんに借りを作るのか。
迷うな…でも、お弁当を作ったら、アルは喜ぶかな?
それより、琳と姉ちゃんの追い掛けっこは終わったのかな。
「私がどうかした?」
「姉ちゃんっ…」
いきなり振り返らないでよ、心臓が止まっちゃうよ。
「朋ちゃんは、男が喜ぶお弁当のおかずとか詳しい?」
「当たり前でしょ。私を誰だと思ってるの? お弁当もお菓子も、なんでも任せてよ」
「さっすが朋美お姉様や!」
ダメだ、琳が勝手に話を進めちゃったよ。
二人だけで盛り上がっていくお弁当話を聞きながら、僕はアルを思い浮かべた。
いつも牧野さんの美味しいご飯を食べてるアルだけど、僕なんかの手作り弁当で大丈夫なのかな?
まだ作り慣れてるならいいけれど、初めてだし…。
庶民の味だよ、なんてごまかし方はできない。
「正太郎!」
「ひゃっ」
いきなり姉ちゃんに呼ばれて、僕は現実に引き戻された。
「メニューと調理指導は任せて。帰ったらすぐに三人で買い物に行くよ」
「う、うん…」
「そうと決まったら、ちょっと寝とこ!下ごしらえかてあるんやで」
「わかった…」
こうして、僕がアルに手作りのお弁当を振る舞うことが、琳と姉ちゃんによって決定された。
二人がやけにノリノリで怖い。
調味料の分量を間違えなければたぶん大丈夫だけど、不安だな…。
でも、アルが喜んでくれるかもしれないからがんばろう。
まだ5分も経ってないのに熟睡している琳に呆れながら、僕もゆっくり目を閉じた。
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