帰国した恋人との年始の過ごし方 ■しおりを挿む
「今生の別れやあるまいし、いちいち泣くわけないやろ!」
「もう、愛想のない子やな!」
「おかんはすぐに電話してきよるからな!寂しいて思う暇なんかないんや」
「あ、そうや。向こう行ったら、たまにお味噌とかお醤油とか頼むから送ってな」
「はいはい」
「ほな、あんまりしょうちゃんらに世話掛けんようにな」
琳とおばさんの会話は、結構おもしろい。
去年のお正月にそれを琳に言ったら、笑いの沸点が低すぎるって怒られた。
「やっと帰りよったわ…俺らも行こか。おっちゃんが待ってるわ」
「うん。やっぱり、琳とおばさんの会話はおもしろいよ」
「それ絶対、大阪弁やからっていう補正が掛かってるんやわ」
「そうかなぁ」
方言を抜きにしても、僕はおもしろいと思うけどな。
お笑い番組を見てるみたいな感じなんだけど。
あんまり言うと怒られるので、僕は思うだけに留めておいた。
「待たせてごめんな、おっちゃん」
「いいよ。どうせ渋滞に引っ掛かるから適当に寝ていなさい」
僕たちが父さんの車に乗り込むと、すぐにエンジンが掛かって動き出した。
しばらく走ったところで、琳がなにかを思い出したように僕に耳打ちしてきた。
「アルにお返しの話。俺、ええこと思い付いたんやけど」
「え、なになにっ?」
「アルは明日の昼前に日本に着くんやろ? ご飯ってなったらどうせ外食するんやろし、お弁当でも手作りしたったらどない?」
お弁当!?
僕は料理なんてしたことがないんだけど。
学校には、母さんが作ってくれたお弁当を持っていくだけだし…。
「僕に作れるかな?」
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