傍にいない恋人との年末の過ごし方 ■しおりを挿む
「なんか、シンプルやのにめちゃくちゃ凝ったデザインやな」
「既製品ではいいものがなかったから、作らせたんだって」
なんやねん、ええもんがないから作らせたって。
発想が庶民の俺には思い付かんわ。
「って、これ…!」
ブリリアンカットやんか!
本物のダイヤモンドやんか!
小さめやからって、こんなんストラップの装飾として使うな!
「これ、ものすごく高いんじゃないかと思うんだ。どうしよう」
「アルはなんて言うてたんや?」
「アルがいない時に僕を護ってくれるものだから、ずっと付けておいてくださいって」
「なるほどな」
コメントに困る台詞やな。
「僕も、なにかお返ししたい…」
「なんもさせてもらえへんのか?」
「『私は正太郎から、笑顔というプレゼントを毎日貰っています。私は世界一の幸せ者です』って言われた」
「うわぁ…」
クサい。そらクサすぎるわ。
さすがの俺でも、ここまでクサい台詞は思い付かんで。
天然で言うんやろな、あいつは。
普通やったらドン引きされて、二度と会いたくないとか言われるレベルやで。
でも、アルがあの笑顔で言うたら許されるんか。
「ずるいよね。すごく真面目に、あんなクサいことを笑顔で言うんだ」
「そらずるいわ。あの笑顔はあかんやろ」
「だよね!…どうしよう」
アルぐらいの金持ちやったら、手に入らん物の方が少ないしな。
なにしろ、既製品が気に入らんかったら作らせるんやし。
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