傍にいない恋人との年末の過ごし方

しおりを挿む



「なんか、シンプルやのにめちゃくちゃ凝ったデザインやな」

「既製品ではいいものがなかったから、作らせたんだって」


 なんやねん、ええもんがないから作らせたって。

 発想が庶民の俺には思い付かんわ。


「って、これ…!」


 ブリリアンカットやんか!

 本物のダイヤモンドやんか!

 小さめやからって、こんなんストラップの装飾として使うな!


「これ、ものすごく高いんじゃないかと思うんだ。どうしよう」

「アルはなんて言うてたんや?」

「アルがいない時に僕を護ってくれるものだから、ずっと付けておいてくださいって」

「なるほどな」


 コメントに困る台詞やな。


「僕も、なにかお返ししたい…」

「なんもさせてもらえへんのか?」

「『私は正太郎から、笑顔というプレゼントを毎日貰っています。私は世界一の幸せ者です』って言われた」

「うわぁ…」


 クサい。そらクサすぎるわ。

 さすがの俺でも、ここまでクサい台詞は思い付かんで。

 天然で言うんやろな、あいつは。

 普通やったらドン引きされて、二度と会いたくないとか言われるレベルやで。

 でも、アルがあの笑顔で言うたら許されるんか。


「ずるいよね。すごく真面目に、あんなクサいことを笑顔で言うんだ」

「そらずるいわ。あの笑顔はあかんやろ」

「だよね!…どうしよう」


 アルぐらいの金持ちやったら、手に入らん物の方が少ないしな。

 なにしろ、既製品が気に入らんかったら作らせるんやし。




- 10/33 -

[≪prev | next≫]



 ←Series Top





第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -