傍にいない恋人との年末の過ごし方 ■しおりを挿む
「陽平に好きな人ができたのも驚きだけど、陽平を好きになる人がいたのが一番驚き。ねぇおばあちゃん」
固まっていた母が漸く動き出したと思ったら、感心した顔でサラリとひどいことを言った。
俺にだって今まで、一応恋人みたいなものがいた時期があったのに。
俺はその人たちを“恋人”とは呼べなかったから、わざわざ家族には言っていなかったけれど。
「まだお付き合いして、日が浅いのかもしれないねぇ。陽平の本性を知ったら…」
「そうよね。陽平は、性格以外を見ればかなりいい男だもの」
これが肉親の言うことかな。
性格は良くないと自覚はしているけど、肉親から言われると少なからずショックを受ける。
「ひどいなぁ、ちゃんと俺の性格をわかってくれているよ」
思わずそう漏らしたら、すごい勢いで食い付かれた。
母と祖母から根掘り葉掘り質問された上に、そのうち帰ってきた父にまで質問攻めを受けた。
「そんな奇特…いいえ、心の広い人、滅多にいないわ」
「大切にするんだよ。逃がすと後がないよ」
「近いうちに連れてきなさい!」
言い返す隙を与えられないまま、半ば強引に次の機会に連れてくることを約束させられた。
俺はまだ19歳なのに、家族から本気で孤独死を心配されていたらしい。
俺を好きで、相手が人間なら誰でもいいとまで言われて、もうどうにでもしてくれって気分になった。
まだ琳が男だとは話していないけれど、こちらの方は彼を普通に紹介しても心配なさそうだ。
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