傍にいない恋人との年末の過ごし方 ■しおりを挿む
もう微妙な年頃だからこういうことは嫌がるはずなのに、どうもこの子はブラコンのようで俺にべったりだ。
「お兄ちゃんは相変わらずかっこいいね」
「ふふ…ありがとう」
玄関を開けて中に入ると、祖母がリビングで一心不乱に編み棒を動かしていた。
「おばあちゃん、ただいま」
「あら!陽平じゃないの」
実花を下ろしてソファに座ると、母がキッチンから出てきた。
「おかえり、陽平。日本はどう? 恋人なんてできたりした?」
「ただいま母さん。本当に恋人ができたよ。鋭いね」
「…………………」
…何故ここで沈黙するんだろう。
普通、息子に恋人ができたら騒がしくなるんじゃないの?
相手はどんな人だとか、どこで出会っただとか、いろいろ訊かれるのが普通じゃないの?
そういうのは好きではないけれど、反応がないのも寂しい。
「っ…やだ!お兄ちゃんは、実花のなんだよ!?」
「俺は永遠に、実花のお兄ちゃんだよ」
「そういう話じゃないもん!」
「実花、我が儘を言わないで」
「…認めない!どこの馬の骨とも知れない女に、お兄ちゃんは渡さない!」
「はぁ……」
半泣きで走り去る後ろ姿に、溜め息しか出ない。
どこで覚えたんだ、あんな台詞。
未だに大人二人は固まっているし、唯一反応してくれた実花は、ブラコン全開だし…。
それよりも実花には、そろそろ兄離れしてもらわないと困る。
いつか琳をここに連れてくる時にもあのままだったら、すごくうるさくなりそうだ。
ま、琳はキスで塞ぐと言えば黙るけど。
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