傍にいない恋人との年末の過ごし方

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 そんな微妙な空気の中、車が屋敷の玄関前で静かに停車した。

 先に降りてドアを開けると、スイッチが入ったのか“正太郎大好きアルくん”から“アルブレヒト・クリフォード”へと戻ってくれた。

 俺の心配が杞憂に終わってよかった…さすが、俺の主だ。


「お帰りなさいませ、アルブレヒト様」


 重厚な扉を開けて中に入ると、使用人たちが整列して出迎えた。

 荷物はすでに送ってあるので、俺の仕事はここで終わりだ。

 屋敷の奥へ向かうアルを見送った後、近くの使用人に帰ることを告げた。

 送迎車を出すと言われたけれど丁重にお断りして、俺は徒歩で実家へと向かった。

 空港で琳に渡したアレ…中身を見たら、琳は騒ぐだろうな。

 きっと耳まで真っ赤になって、俺のお願いを聞くと言ったことを後悔する。

 それでも琳は、俺の言うことを聞いて、俺からは見えないのに従うんだ。

 なんて可愛いんだろう、あいつは。

 最初は、俺の命令を守って二週間も抜かないだろう琳に、ただプレゼントするだけのつもりだった。

 それを使うなら一人でしてもいいよ、なんて冗談を言ってやって。

 反応目的のからかい八割、実際に使ってほしい気持ちが二割。

 でもあの時、琳は俺にお返しがしたいと言ったから、電話しながらさせるつもり。


「あ…お兄ちゃん!」


 琳をどうしてやろうかと考えていたら、気付かないうちに実家の敷地に入っていたようだ。

 懐かしい声に視線を向けると、妹の実花が走ってくるところだった。


「実花、また可愛くなったね」


 勢いをつけて体当たりしてきた実花を抱き上げてやった。




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