傍にいない恋人との年末の過ごし方 ■しおりを挿む
◇Side 陽平
「アルブレヒト様、もういい加減に元気を出していただかないと困ります」
俺たちが恋人たちの見送りを受けてから、もう12時間以上は経過している。
もうじき屋敷に着くというのに、こいつはまったく…。
「…牧野は、二週間も会えなくて平気なのか? 冷酷だな!琳が気の毒だ」
「はぁ…」
どうしたものかな…、溜め息しか出ない。
正太郎さえ絡まなければ、誰よりも完璧な男なのに。
大学を卒業する前にアルに手酷く振られた人たちに、今のこいつを見せたらどんな反応を示すかな。
情けない姿に幻滅するだろうか。
それとも、そこまで愛されているアルの恋人を羨むだろうか。
「クリスマスは恋人ではなく、家族と過ごす日でしょう」
「当たり前だろう。だが、何故クリスマスが終わってもすぐに帰れないのだ」
スケジュールは日本にいる時に説明したはずなのに、このグズり様。
空港では正太郎の悲しみを吹き飛ばすために計算して、敢えて大袈裟に振る舞っていたのかと考えたけれど…。
どうやら俺は、アルを過大評価していたようだね。
「こちらは本国ですから、いろいろ予定があるんです。もう諦めてください。 寂しいなら、合間を見て電話をしてはいかがでしょうか」
「そうか…電話があったな!今、日本は…」
「真夜中です。またの機会にどうぞ」
「…っく、」
プラス17時間も計算できないくらい、アルは余裕をなくしているということだね。
胸ポケットの手帳に挟んであった正太郎の写真を眺める姿には、ひどく哀愁が漂っている。
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