傍にいない恋人との年末の過ごし方 ■しおりを挿む
すぐそこで抱き合って別れを惜しんでるバカップルだけでも、目立ちすぎてかなりヤバいのに。
俺らまで男同士で…いや、男女でもイチャついたらあかんやろ!
「冗談だよ。これから俺は、琳を残して行ってしまうのに…」
「陽平…」
やっぱり陽平かて寂しいんかな…。
でも、いきなりしんみりするんは反則や。
俺は正太郎みたいに、素直に寂しいって言うてられへんねんから。
「こんなところでキスをして…琳が他の男を惹き付けてしまっても、お仕置きができないじゃないか」
「はぁ!?」
儚げな表情が一転、ニヤリと妖しい笑みに変わる陽平。
「さ、寂しいんとちゃうん…?」
「元々週に一度しかゆっくり会えてなかったのに、たかだか二週間で寂しくなるはずがないだろ」
「あ…」
ほんまや、二回ほど会えんだけか。
しかも俺は、受験の追い込み中の追い込みで忙しい時期。
模試でA判定やからって浮かれてられへん季節や!
「それに、寂しがり屋の琳のための用意はあるから、安心してよ」
「なんの話や」
「それは後日のお楽しみ。…じゃあそろそろ時間だから、行くね」
「…わかった。いってらっしゃい」
陽平は俺の髪をくしゃっとかき混ぜて、バカップルに近付いた。
陽平が腕時計を見ながらなんか喋ったら、アルが抱き締めてた正太郎を解放した。
「正太郎…!私は、世界中のどこにいても、正太郎だけを愛しています!」
「うん。僕もだよ」
逃れられへん運命に引き裂かれる、悲劇の二人とちゃうんやからさ…。
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