僕の所有者宣言 ■しおりを挿む
「貴方が好きです、可愛い人」
これが女の子だったらなんて、思う暇というか…余裕がなかった。
そもそも、可愛い人なんて言われた時点で、相手が女の子でも微妙な気分になる。
びしばしと遠慮なしに注がれる視線。
何故かと言えばここは教室。朝のSHRの時間。
僕の右手は掬い上げるように捕らえられ、じっと碧い瞳がこちらを見つめている。
その瞳が僅かに細まって、整った顔立ちに綺麗な微笑みが浮かんだから、僕は堪らず目を逸らした。
僕の意思とは関係なく持ち上がる右手。
手の甲に微かに湿った柔らかいものがふわりと触れた瞬間、教室内が悲鳴とか携帯のカメラの音で満たされた。
思わず右手とそいつを凝視すると、やけに流暢な日本語を喋る金髪碧眼の正真正銘外国人は、僕の右手をそっと下ろして指定された席に着いた。
なんだこの変な外人。
それが僕、御厨(みくりや)正太郎の、アルブレヒト・マイヤーへの第一印象だった。
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